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仁義なき数的推理

エッセイ
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聡明叡智 数的推理

いきなりですが、ココで問題です。

「A、B、C、D の4人の中から、給食当番を2人選びます。選び方は何通りありますか?」

なんかこんな問題っていうか、クイズみたいなの、よく見ます。
最近クイズ番組とかが多いので、タイトルは忘れましたが、頭脳〇とか、東大〇とか。
賢そうな人達が悪戦苦闘しながらも、正解を導き出す姿を映し出すヤツです。

こちとら算術なんて苦手ですし、家族に阿保がバレると今後の生活に支障をきたすので、すぐにチャンネルを変えるように努めておりますが。
こういう問題、「数的推理」というそうです。公務員試験の科目らしいです。

一定の法則やルールのもと、方程式や数式よって正解を“推理する”数学のクイズみたいなものだそうです。

それはさておき、モヤモヤされていると思いますので…。正解は6通り。
解説は当然のことながら割愛させて頂きますんで。

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第2問 連想ゲーム

もう随分も前の事です。
家内も私も互いに独身でいわゆるアベック…いや、カップルという関係だった頃のお話でして。
その頃は、互いに休みを調整したりして色々な所へ旅行に行ったりしたものです。

そして、そんな旅行先の1つに広島がありました。
私は広島に友人が居たもので、若い時からちょくちょく出向いてはいたのですが、家内は行った事が無いというので、ならば行ってみようではないかということになり、一路広島へ。

さて、ここで再び問題です。広島と言えば何を連想しますか?

 

やはり忘れてはならない原爆ドーム、平和記念公園。
宮島の厳島神社。広島城。
広島東洋カープ。

ハイハイ。正解、正解また正解。

「広島カープ」の画像検索結果「もみじ饅頭」の画像検索結果

 

う~ん。後は?
そうそうB&Bのもみじ饅頭。

イヤ、“B&B”が作った訳じゃないけどね。
でも正解。

そっち方面だったら、菅原文太の「仁義なき戦い」シリーズ。えっ?知らない?東映の映画。
…じゃあイイか。

あとは…。
あと、牡蠣も有名。
ハイ。
けどなんか忘れてない?
あっ!お好み焼き?

そうこうするうちに、新幹線は無事に広島に到着。

ハイ!合格です。おめでとうございます!広島へようこそ。

はらぺこあおむし迷走中

そうそうコレ。この市内電車。イイ雰囲気です。
私にとっては懐かしいですが、家内はなんせ初めての広島。

広島駅南口を出て直ぐにございますのが、市内電車の発着場所で、こちらの市内電車、
市内をぐるりと回る市内線、
比治山下経由の広島港行き、
西広島経由の宮島口行きなどがございまして、広範囲に渡り…

えっ、電車来た?あっハイ。

観光客と市民を一緒に押し込んだ電車は、ガタンゴトン動き始めました。
いいね。旅行気分も盛り上がってきました。
おっとお客さんどちらまで?紙屋町で降りるから。そういうオタクはどちらまで?

何だコイツ、飲んでんのか?そう思われる方も多いでしょうが、飲んでるどころか、こうでもしないと腹が減りすぎて。実は今朝、待ち合わせ時間には間に合ったものの寝坊して、コーヒーを流し込んだだけで飛び出したもので。

そして現在、時間は昼の2時を回ったところ。
カラッポの胃袋、食べ物の代わりにハイテンションでも詰め込んでおかないとやっとられんのじゃ。

暫し電車に揺られた後、広島中心街に到着。流石、賑わっております。
「さて、どちらから巡っていきましょうか?」
などと、呑気な事を言う前に何か食わないと、散策どころではありません。

すると家内も一言。「お腹が空いたね。」
以心伝心、ツーと言えばカー。
そうか、分かった。ならばまずは、腹ごしらえから。

しかし、これだけの繁華街、いざ食事となるとかえって目移りしすぎてどの店に行こうかと決断が鈍ってくるもので…。結局ワンブロックの区画をウロウロして決め切らず。

イカンイカン、ここは男らしくズバット決断せねば、家内に優柔不断なヘタレと思われてしまう。
いやそれより、何時までもひもじい思いをさせては不憫申し訳なく。

まずは、どこで食うかではなく、何を食うかに焦点を絞らないと。そう、何を食うか?

それならばなんの躊躇もなく、お好み焼きでしょう。
この地に来て今さら何を迷うことがありましょうか?
イヤ、有りはしない。二人の意見は一致。ならば目指すはお好み焼き屋。

なんと簡単な事実に気付かなかったのか。楽勝ではありませんか?

ところが、お好み焼き屋を発見するも、数軒が軒を連ねてまして、結局、またどこで食うかという振り出しに戻ったわけで。
しかしながら、時間が時間だけにどの店もチラホラと空席は有り、直ぐに食べれそうな感じではありました。

なるべくお客が少なそうで、尚且つうまい店。
そんな店を目利きできるわけも無く、ここはもう直感に頼るしかないわけで。

おしっ。もうここに決めた。四の五の言う前に暖簾をくぐりました。

美食レポート

をごめ~ん!やってる?

「…。いらっしゃい。どうぞ。」

やや不愛想な返事の方向を見ると、頭にタオルを巻き、無精ひげを生やした小太りの兄ちゃんがL字型のカウンターの中で我等を迎えておりました。
そして店内に目をやると、長いカウンターの方のほぼ中央当たりに1組のカップルが座っておりました。
ならばと入口直ぐの短いカウンターの方に席を取りました。

さてさて、何にしますかね。豚入り、海老入り、烏賊入り、ミックス。

そば抜き?そうか広島のお好み焼きは焼きそば麺が入るんだっけ。イヤイヤ、そばは抜いちゃいけんじゃろ。
広島旅行最初の食事、お好み焼き。なんとベストな選択。
ならばここはさらに贅沢にミックスを頼むしかないでしょう。ドーンと。

家内も頷いておるではありませんか。
「スイマセン。ミックスを2つ。」

「…。は~い。」

やる気の全く感じられない返答。まあ良し。
やたらと元気で明るい接客で、好印象な店に限って、マズかったりしますもんね。
逆にこういう不愛想な方が、美味しかったりするもので期待が持てますよ。

取り敢えずは、食事の席に就けたということで一安心。

お好み焼きが焼けるまで、二人でこの後のスケジュールを確認したりして暫し歓談。
先客のカップルもガイドブックらしきものを広げて談笑しております。

改めてぐるりと店内を見渡すと、どうやら年季の入ったお店のようで、一昔前の雰囲気にまた期待が高まります。

店員さんは兄ちゃんが1人だけです。バイトかな?雇われ店長かな?
いくらカウンターだけのお店でも満席になれば1人じゃ無理でしょ。
あっ、そうか今の時間だから休憩かなんかで出てんのかな?それで兄ちゃん1人。うん、納得。
そしてそれは要らぬ世話。

カウンターの中の大きな鉄板の上では、早速お好み焼きが焼かれていました。

まずはお好み焼きの生地を薄く延ばして…。
おっ、まるでクレープじゃんね。

そしてこれでもかというくらいのてんこ盛りのキャベツ千切り。
そして天かす。

あらっ、イカ天ちぎって入れんのか。なるほどね。

もやしもタップリ乗せて。豚バラスライス乗せて。
しかし、あんなに盛ってひっくり返せるのか?
さすが!兄ちゃん上手いね。見事なもんだよ。

全部混ぜてから焼く大阪風お好み焼きと違い、重ねて焼いていくお好み焼き。
家内も目の前で焼くのが見れるんで興味津々。
気付けばもう一組のカップルも、手際よく焼かれていくお好み焼きに目を奪われていました。

さすが、みんなで楽しめるお好み焼き。

ただしお好み焼きを焼いている当の本人を除いては。

そうです。兄ちゃんだけは相変わらず愛想のカケラも無く、淡々と作業をこなしていました。
面倒くさそうに、そして鉄板で焼かれるお好み焼きに一喜一憂しているミーハー観光客にも飽きたかのように。そしてそれは私たち。

ほっといて下さい。カウンターを介したそんな温度差なんて知ったこっちゃありません。
そんなこと気にしてちゃ、お好み焼きに失礼ですからねぇ。

こちらが勝手な解釈を思い巡らしている間にも兄ちゃんは段取り良く、そばを焼き、その上に裏返したのを重ねて行き…。

ウン?待てよ。イチ、二―、サン、シー…。
あれっ?アレとアレを目玉焼きの上に乗せると…。
5枚。あれっ?5人分焼いてる事になるな。客は4人だけど?まあイイか。

おっ!そして裏返し~の完成か?キタキタ~!

さすがに兄ちゃん慣れたもので注文時のタイムラグをものともせず、ほぼ同時に4枚完成させていきます。
あまりにもやる気がなさそうだったので、チョット小馬鹿にしてました。スミマセン。結構なお手前で。

ソースをかけ、ザクザク切り目を入れ、青のり、魚粉を振りかけ、完成です。

「お待たせしました。」イヤイヤこちらこそありがとう。
ヤバい喉が鳴るんじゃが。いただきます。

口に頬張れば、ほぐれていくそばの食感とそれを追いかけるキャベツの甘味、そしてシンプルな卵の味。
さらにそれらを違和感なくまとめ上げるふくよかなソースの香り。期待を裏切らない味。完璧。
幸せは今此処にある。間違いない。

見たまえ。家内も、あのカップルもみな幸せに満ちているではありませんか?今この時。

空腹のため、一気に半分ほど食べてしまった時でした。
ふと見ると、まだ鉄板の上でお好み焼きが1枚製作中ではありませんか?

ほら、やっぱり5枚だったんだ。間違ってなかったんだ。

最終問題

最終問題です。

お好み焼き屋さんにお客さんが4人います。お好み焼きを注文しました。さて、鉄板の上には何枚のお好み焼きがあることになりますか?ただし1人で2枚以上注文はできないものとします。

数が合わないお好み焼きが1枚。兄ちゃん気にも留めず、これまた淡々と仕上げていきます。

家内とカップルも、この残り1枚のお好み焼きの行方が気になってはいるようです。
少しずつ空腹が満たされてきつつあり、少しずつ脳にも栄養がいきわたり始めました。

お好み焼きを食べながら、ふと推理してみました。

推理1。単純に兄ちゃんが間違えた。
イヤ、それはないか?たった4人のお客、そして対する相手は今までの手際の良さから、ベテランだと思われる兄ちゃん。不愛想だが。
オーダー間違い?ないな。

推理2。予約の客が今から来る。
そいつはどうにもせっかちで、焼けるまでの時間を楽しむことさえできず、暴れ出してしまうようなヤツ。
これまでも何度もそいつに店を滅茶苦茶にされた為、来る前にご一報をいうことになり、ならばとヤツから予約が入り、間もなく来るであろう時間。
えっ!もしそうなら大丈夫か?今日は中の具材が違うとか言って暴れやしまいか?要注意人物の前オーダー。

推理3。出前もしくはテイクアウト。
今からパックに盛り付けて配達に行くか、お客さんが取りに来る。
この近所で働く人だったら、商売人だと推測されるな。当然、食事時間も不規則。
だからいつでも食べれる出前、テイクアウト。うんこれが一番可能性が高い。

なんだそういうことか。
脳裏に微かに引っ掛かっていた用途不明の1枚の謎が、我が鋭敏な推理によりひと段落し、再びお好み焼きに集中。うん。ウマし。

すると兄ちゃん、すでに完成し鉄板の上でしばらく放置されていたお好み焼きを皿に移しました。
さらに客のいないカウンターの一番端に置きました。

ヤバいテイクアウトじゃなかった!誰か食べるんだ?ということはアイツが来る?

この唐突で不可解な兄ちゃんの行動と、お好み焼きの行く先に、さすがにカップルも不可思議な表情を見せ、こちらにチラッと目くばせをしてきました。
おお同志よ。その気持ちは痛いほどわかる。

するとその直後、衝撃の展開が…。

おもむろにカウンターの中から兄ちゃんが出てきて、カウンターに座ったではありませんか。
しかも、手には箸を持って。そしてあろうことか、謎に満ちたお好み焼きを頬張ったのでした。

…。(お前が食うんかい‼)

この時、4人の気持ちは1つになりました。
そして、互いに笑いをこらえながらお好み焼きを食べ続けたのです。

まあ、とにかく我が“数的推理”は、ルール=“仁義”なき結末によって不正解。徒労に終わったのでした。

その後、兄ちゃんこの世のものとは思えぬスピードでお好み焼きを平らげ、何事もなかったかのようにカウンターの中の定位置へ。
平静を取り戻した店内。4人+1人は満腹感による緩やかな時間を共有しております。

おっと、いつまでもゆっくりしておれんのじゃ。さて行きますか。兄ちゃん、ごちそうさん。

「ハイ!ありがとうございます。」

あらっ?最後に、初めて笑顔を見せてくれました。
そしてこちらも最後の推理。
今までの不愛想は、腹が減ってたから。これは多分正解でしょう。

こちらこそありがとう。
暖簾をくぐり通りに出ると、広島の初夏の陽射しが眩しく、我等を歓迎してくれているようでした。

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