植田正治と砂丘1945年 そしてときどき松葉ガニ

エッセイ
出典:https://www.amazon.co.jp
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禅、未だ全然諒とせず

「茶に逢うては茶を喫し、飯に逢うては飯を喫す」

禅語の一つです。
「相対的な物の見方から離れて、絶対の見地に立つ」
といった意味合いで使われ、
悟りを開いた後に戻って来る場所を示しています。

なんのこっちゃ。何処へ行けばいいのやら。

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曖昧見ー舞いん

なんの予定も無い休日。
朝遅く起きてのらりくらりと時間を費やしていたものの、このままゴロゴロしててもしょうがあるまいと、一大決心をして近所の書店に足を運んでみることにしました。

そう何処へいけばいいのやら、やっつけ書店へいくのさ。ベイベー。

昔は時間つぶしにうってつけの場としてよく立ち寄っていたのですが、ネットの普及で書店へわざわざ出向くこともめっきり少なくなった昨今、久しぶりの店内の雰囲気はかえって新鮮に感じられました。

新刊コーナー、文庫本コーナー、ファッション誌コーナー、料理コーナー、そうそうこんな感じでした。
あてもなくふらついては書籍を手に取りパラパラとめくり、ふむふむ、なるほどなどと感心しているうちに芸術コーナーの写真集コーナーの前に。
ここも他に違わず、アイドル写真集、犬猫写真集など定番のラインナップ。

そんな中パッと目に留まったのが、一冊の写真集でした。
「植田正治写真集」とありました。
ウエダショウジ?はて、何処かで聞いたような?
どれどれ、見せてごらんなさい。

あ!…。ページをめくる手が、はたと止まりました。錆びついていた記憶の歯車がギシギシと軋みながら、噛み合い始めました。そう。そうだった。

砂丘、人物、シュルレアリズム。

蘇る感覚。次いで湧き起こる不思議な感情。
切り取られた時間の世界に引きずり込まれ、暫くその場に佇み。

そして歯車が更にもう一つ噛み合った瞬間、
書籍を棚に戻し、躊躇なく帰路に就いていました。

記憶が確かなら、それは「砂丘1945年」。
そしてアレキサンダー・ラグタイム・バンド。A.R.B。高校時代に心酔していたバンド。
そのアルバム・ジャケットの写真が確か…?

慌ただしく家に駆け込み、押し入れの奥に仕舞い込んだ段ボール箱を引きずり出しました。
無造作に詰め込んでいた大量のCDをガサガサとひっくり返し、捜査開始です。

違う。…これも違う。げっ!懐かし~スターリン。ルースターズもある。
どんな感じだっけ?ちょっと聴いてみる…ってそんなことしてる場合じゃないし。
けど、やっぱ、後で聴いてみよっと。ヒヒッ。

捜査開始から概ね15分余り。ありました。
「砂丘1945年」A.R.B。

早速、ライナーノーツの末尾のページを…。
やはり。『Photos:植田正治』。

そう、繋がりました。かつて出会っていたのです。

曖昧さに見舞われていた時間は断ち切れました。

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 STAR LIGHTそしてパラダイス砂丘

時は1988年、昭和63年の冬。
ブラウン管には、鉢巻をしてローラースケートを履いたアイドルグループが、所狭しと踊っていました。

(もういっか?寝るとするか。)
そう思いながら、あくびを噛み殺しながら眺めていたテレビを消すと、暖房の室外機のモーター音だけが低く唸っていました。
そっとカーテンを開けると、ネオンの灯りの洩れる路地裏にも、薄っすらと雪が積もっていました。
(そりゃあ、寒いはずだわ。明日、改めて砂丘に行ってみるか。)
部屋の電気を消し、シーツに潜り込みました。

鳥取駅すぐ近くの安いビジネスホテルの一室。
思った以上の寒さにうんざりしながらも、この選択肢の無い状況を受け入れるしか有りませんでした。
もっとも自ら望んで来ているのだから、選択も何もないのですが。

さらに話は遡ること24時間前。

年末年始だというのに休みも無く働き詰めで、世間様が仕事始めだとかで、日常に戻って来た頃、こちらはようやく連休を迎えました。
チャンと正月でも働いている人々がいる事は忘れないで欲しいモンです。まったく。

「リゲイン」の画像検索結果

出典:https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/

最近は地価も株価も上昇し好景気で、
人気俳優が「24時間戦えますか?」などと洗脳するコマーシャルが流行。

今更、かつてのモーレツ社員じゃあるまいし。

おかげで独身、一人暮らしは格好のターゲットに。さあさあ働きたまえとばかりに正月出勤。

そして今頃になって正月休みですよって言われても、お屠蘇気分は街の片隅にも見当たらず、
何処へ行けばいいのやら。

それならいっそ気の向くまま、足の向くままふらりと旅に出てみましょうか?
ふと思い付き、さればどちらへ参ろうかと暫し考慮して。

そして思いついたのが鳥取砂丘。

「なんでまた好き好んで…。今じゃなくてもいいでしょ。」
周りの良識ある諸氏は、口をそろえてこう言うでしょう。

そこは砂丘、当然なんにもないでしょう。
しかも今の気候は冬真っ只中。寒い、雪、低い空、荒れた海。暗っ!

解っております。自覚しているのでほっといてくれたまえ。

何となく今しか行けないような気がして。よっしゃ、決めた。明日出発しまひょ。そう、それが24時間前。
そして皺くちゃな紙幣をポケットに突っ込んで、取り敢えず部屋を飛び出した次第で。

かたや、旅という概念に対し、カタログのような優雅さをイメージしているチミたちはこう思っておられるのではないでしょうか?
「なんだその思いつき、行き当たりばったりの旅は?どうせ同じぶらりひとり旅なら、チャンと高級温泉宿を予約してから出発して、ゆったり温泉に浸かってからの豪華な食事を満喫して。
頑張ったボクちゃんに、ご褒美だからと贅沢三昧。いいのいいのよ、たまにはねって。ゆるく行きましょうよ?それが旅ってもんでしょう?」ってな具合に。

…ケッ!なんと陳腐な。恥ずかしくって、ケツがかゆくなるぜ。クソ野郎。
あっ、失礼。ついついお下劣に。

えっと~…。おいおいチミたち、やめてくれたまえ。そんな月並みな発言は。

そんな、労をねぎらい癒されたい旅なら、歳とってから行きゃぁいいんで、今は今しかできない事をやる方が得策だとは思いませんか?紳士淑女のみなさま、いかがでしょうか?

鳥取砂丘を選択したのは、そんな衝動的な動機もありますが、A.R.Bの「砂丘1945年」に傾倒していたのも理由の一つ。

そして本当の理由は、何となく惰性で消化しているだけの日常で感じている焦燥感や、一抹の不安の解答を得て、開放されたいところもどっかにあって。
ぶっちゃけ、煩悩だらけの街の喧騒から逃れたいのが正直なところで…。そう、鬱陶しくなって。
なんだ、病んでるのか?

そして遠路はるばるやって参りました。が…。
初日、雪に見舞われ、一旦砂丘まで辿り着いたものの、寒さとひもじさに耐えきれず、砂丘から引き上げてきた次第で。
飛び込みでありついた安宿でようやく暖をとり、駅で買ったタイムセールの値引き弁当と安ウィスキーのお湯割りを流し込み、一息ついて、今に至るという事です。

やはり事前の調査、対策を怠るとこんなハメになることが学習出来たことは良しとしましょう。

そう前向きに捉えて。そう明日。
明日のために早めに休むとしますか。

ようこそココへ。今宵はSTAR LIGHT。
そして明日は、遊ぼうよパラダイス砂丘。

 

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ブラウン管には鉢巻をしてローラースケートを履いたアイドルグループが、
まだ、所狭しと踊っています。

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 我、カニと戯れず。無念

翌朝、チェックアウトを済ませ再び鳥取駅へ。
すると、魚臭いような独特の匂いが…。

なんだと辺りを見渡すと、昨日は気付きませんでしたが、駅前でカニを売っていました。
しかも無造作に荷台に山積みで。

そうかこの地方の名物か。

山積みのカニも無論初めて見る光景でしたが、悲しいかな、当時の年齢では、地方グルメに舌鼓を打つ嗜好水準に満たなかったようで。 …要するに興味が無かったわけで。

今思い返せば、なんともったいないことをしたのだ。
せめてその山積みのカニの群れの、足の一本でも食べておけばよかった。イヤイヤ、足一本と言わず、半身いやカニ一杯でも食べておけばと、後悔も山積み。そして後の祭り。

カニを置き去りにして駅前のバス乗り場へ向かい、鳥取砂丘行きのバスを待つことにしました。
昨日、幸か不幸か、この寒さの中でも、昨日砂丘の入口までは行けていたので予習済みでしたが、
改めてバス停を確認。『鳥取砂丘(砂丘会館)』より『砂の美術館前』で下車した方が近かったな。
昨日おばちゃんに聞いておいて良かった。

砂丘方面のバスに乗り込み、いざ出発。
おかげさまで、昨夜の雪は止み薄っすらと陽が差す程に。
徐々に期待感も高まってきて旅らしくなって来ました。

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ゆるく行こうぜ!と言われましても・・・
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