これがKeziah Jones(ギザイア・ジョーンズ)
ギターを叩きながら演奏をするギザイア・ジョーンズ。そしてその両脇を固める強力なリズム隊。
最小にして最強の3ピース。
無駄のないタイトなサウンド、シンプルでありながら力強くうねるグルーブ。
バンドとしてはまさに究極のスタイル。
Blufank(Blues+Funk)
Keziah Jones(ギザイア・ジョーンズ)シンガーソングライター・ギタリスト
1968年1月10日生まれアフリカ、ナイジェリアの首都ラゴス出身。
ヨルバ族という民族の族長にして資産家の父親のもとに生誕。
8歳のとき医師を目指すためにロンドンのミルフィールド・パブリック・スクールに入学。
当初は勉学に勤しみ優秀な生徒だったと言われています。
しかし、レイ・チャールズやジミ・ヘンドリックス、プリンスなどの音楽と出会い、結果として英才教育のシナリオからドロップアウトします。
独学でギターをマスターし、1988年にロンドンのクラブでライヴ・デビュー。
オリジナル曲やプリンスのカヴァーをプレイしていました。
その後ミュージシャンとして活動、クラブを離れ路上や地下鉄でバスキングを始めます。
ロンドンとパリをバスキングで行き来する活動の中で、独自のスラップ奏法やブルースとファンクを融合させたブルーファンク(Blufank)というスタイルを確立させていきます。
その特徴的なスラップ奏法。
主にベーシストがよくプレイする「チョッパー奏法」といった方が分かりやすいかもしれません。
アコースティック楽器などでは、
「演奏する指で弦を叩き指板に打ち付け、その直後に弦を弾く事で、スラップ音と実音(音程)を鳴らす奏法」
とされており、
エレキベースなどでは、
「親指で弦を叩くようにはじく動作(サムピング)と、人差し指や中指で弦を引っ張って指板に打ちつける動作(プリング)があり、この二つの動作を組み合わせる事で打楽器のようなパーカッシブな効果が得られ、基本的な弾き方としてはサムピングで低音弦、プリングで高音弦を奏する」
と解説されています。
なんのこっちゃといった感じですが、まぁとりあえず叩きながら音を出すということです。
「百聞は一見に如かず」ってことで。
そんな活動がマネージャーのフィル・ピケットの目に留まり、レコード会社との契約を獲得。ミュージックシーンにその名を知らしめることになります。
Free Your Soul !
Blufunk Is A Fact (1992)
出典:https://www.amazon.co.jp/
- The Wisdom Behind the Smile (Cash)
- Walkin’ Naked Thru’ a Bluebell Field
- Rhythm is Love
- Runaway (Slavery Days Are Over)
- Where’s Life?
- The Funderlying Undermentals
- Frinigro Interstellar
- Free Your Soul
- A Curious Kinda Subconscious
- The Waxing + The Waning
- The Invisible Ladder
- Pleasure is Kisses Within
1992年にリリースされたデビューアルバム。衝撃のアルバムでした。
シャープなカッティング、彼独特のスラップ奏法。打楽器のようにのギターを操るパーカッシブなプレイ。
そしてストリート出身という肩書き。アルバムの音を聴いただけでもすぐにそれと解る演奏技巧の凄さ。
当時、映像を入手するのが困難で、どんな風に弾いているのか想像するしかなかったのがもどかしかったのを憶えています。
ギターのプレスタイルに注視してしまいがちですが、5.のファルセットのように、そのヴォーカルも力強くもメロウ。また、ルーツでもあるアフリカ音楽的なシンプルなメロディーなども彼独自の世界観を際立たせています。
冒頭記載した動画のように、このアルバムではギザイアはアコースティックギターを使い、ほぼドラムスとベースとのスリーピースでの演奏となっています。
「Blufank」“ブルーファンク”と自ら名付けた音楽スタイル。
「Free your Soul」“魂を開放せよ”というメッセージ。そしてその圧倒的なギタープレイ。
ギザイア・ジョーンズの原点とも言える名盤です。
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African Space Craft (1995)
出典:https://www.amazon.co.jp/
- Million Miles From Home
- Colorful World
- Prodigal Funk
- Splash
- Dear Mr Cooper
- African Space Craft
- Speech
- Cubic Space Division
- Funk ‘N’ Circumstance
- Man With The Scar
- Never Gonna Let You Go
- If You Know
3年後の1995年にリリースされた2ndアルバム。
前作に比べ、ギターにファズ、ディストーション系のエフェクトで歪みが掛けられて、よりヘヴィーでロック色の強いアルバムです。
ギザイア自身もこの点について、
1stでは自分の出したいサウンドを表現しきれなかったんだ。
~中略~
今回はスパニッシュ・ギターにピックアップを付けて、よりエレクトリックな音作りになっている。その方が頭の中で鳴ってる音にちかいからさ。」
【アフリカン・スペース・クラフト ライナーノーツより抜粋】
とコメントしています。
また、曲によってはリズムやアレンジにアフリカ的なグルーブ感があり、ギザイアもこのアルバムを「アフロ・ファンク・ロック」と定義付けています。
【同上】
この言葉が、後にアルバムごとに次のステージを示唆し、自らの世界観を提示していく彼のスタイルのキーワードとなります。
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grope in the dark ?
Liquid Sunshine (1999)
出典:https://www.amazon.co.jp/
- Hello Heavenly
- God’s Glory
- Liquid Sunshine
- New Brighter Day
- Runaway
- Don’t Forget
- Phased
- I’m Known
- Sunshineshapedbulletholes
- Functional
- Stabilah
- Wounded Lovers Son
- Teardrops Will Fall
1st、2ndアルバムに比べると実験的な要素が多いアルバムです。
それまでのスラップなどの躍動的なイメージから一転、理知的で内省的な方向へ踏み込んだ作品で、ストリングスや打ち込みを取り入れ今までにないサウンドを展開、多くのファンを困惑におとしめた“怪作”です。
確かに一聴すると難解でとてもキャッチーとは言い難く、手強い作品です。
しかしながら中毒性を孕んでおり聴けば聴くほど、ギザイアの造詣に触れれば触れるほどハマっていきます。
前作で西洋音楽への傾倒を否定したギザイアでしたが、今作は自身が目指すアフロ・ミュージックを模索したアルバムと言った方が分かりやすいかもしれません。
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BLACK ORPHEUS (2003)
出典:https://www.amazon.co.jp/
- Afrosurrealism For the Ladies
- Kpafuca
- Femiliarise
- Wet Questions
- Neptune
- 72 Kilos
- All Praises
- Beautiful Emilie
- Sadness Is
- Autumn Moon
- Black Orpheus
- Orin O Lomi
- Guitar in the River
賛否両論の前作から4年後の2003年にリリースされた4枚目のアルバム。
初期の頃のパーカッシブなギターも復活。ファンク、ブルース、アフロ、レゲエといった要素を随所に散りばめ、以前のしなやかさも感じさせながらも奥行きが広まったサウンドを聴かせてくれます。
でも、今は自分のギターのスタイルを楽譜に起こせるようになった。
今の僕のノートには、ギター・サウンドのいろんな符号が書いてあるんだよ。
右手、左手叩く奏法、かき鳴らす奏法、親指の腹なのか指先なのか、という風にね。」
【「BLACK ORPHEUS」ライナーノーツより抜粋】
「BLACK ORPHEUS」ライナーノーツより転載
独学でギターを習得し、独特の奏法、そのサウンドで世界を驚嘆させたギザイアでしたが、
ルーツであるアフリカ、取り分けアフロ・ミュージックへの意識は高く、その自身のサウンドとの方向性に試行錯誤していた感がありました。
しかし、自らのサウンドを自己分析し反映された今回のアルバム、1stの「Blufank is a Fact」が進化し、より深みをましたアルバムといった方が分かりやすいかもしれません。
奇しくもデビューアルバムから約10年。ある一定の着地点を見出したかのようなアルバムです。
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