A Brighter Day
その後ロニー・ジョーダンはニューヨークへと拠点を移し、ジャズ・レーベルの名門、BLUE NOTE(ブルーノート)に移籍。
そして第1弾となったアルバムが「A Brighter Day」でした。
「A Brighter Day」 (1999年)
- A Brighter Day
- Aftermath
- Mackin (Featuring – DJ Spinna)
- Why
- Mystic Voyage (Featuring – Roy Ayers)
- Breauxlude
- London Lowdown
- Two Worlds
- Mambo Inn
- Rio
- New Delhi
- Seeing Is Believing
- 5/8 In Flow
- A Brighter Day (Remix)
(Featuring – Mos Def)
前作でアシッドジャズからの方向転換を見せた感じでしたが、今回はさらにヒップ・ホップやラップの要素を最小限に抑え、ジャズへのアプローチが色濃くなりました。
アルバムタイトル曲1.「 A Brighter Day」では Stephanie McKey(ステファニー・マッケイ)をヴォーカルに迎え、ロニーならではの抑制されたリフに、陰影のあるベースラインが印象的。
4.「 Mackin」ではDJ Spinnaをフィーチャリング。
ビブラホン奏者、Roy Ayers(ロイ・エアーズ)の楽曲5.「Mystic Voyage」を本人をゲストにカヴァー。
9.「Mambo Inn」 からの後半は、ラテンのリズムや民族音楽のテイストが取り入れられ、今までとは違ったアプローチを聴くことができます。
新天地での新たな意欲作となったアルバム「A Brighter Day」。
グラミー賞のベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム部門にもノミネートされました。
ロニー・ジョーダンの創造力・表現力に溢れた聴きごたえのある1枚です。
On & Off
2001年にリリースされた通算5枚目のアルバム「Off The Record」。
アルバム「Off the Record」ライナーノーツより抜粋
「Off The Record」 (2001年)
- Intro-Get Ready! (featuring Love Child)
- No Pay, No Play
- Keep Your Head Up (featuring Fay Simpson)
- Floor & More
- Once Or Twice (feturing Sy Smith)
- Ronny, You “Talk” Too Much
- On The Record
- Off The Record
- (The Theme from) Underworld
- Tow Jam (featuring Excite)
ロニー・ジョーダン本人が述べたように、内容は全編がヒップホップの重いビートがベースとなっており、脱ジャズ的なアルバム。
それまでスムーズ・ジャズやコンテンポラリー・ジャズへと向かっていたロニー・ジョーダンでしたが、ここでまさかの方向転換。
原点回帰ともいえるサウンドです。
ワウギターが印象的なファンキーなナンバー1.「Intro-Get Ready!」 で始まり、ヒップホップビートに乗ったロニー・ジョーダンらしいギタープレイへと続く2.「No Pay, No Play」。
そして注目したいのが7.「On The Record」と8.「Off The Record」。
楽曲のタイトル通りOnとOffで好対照を成しています。
緩やかなハウス・ビートを基調にしたダンス・チューンの7.「On The Record」。
逆にメロウで落ち着いたスローテンポな8.「Off The Record」。
7.を陽とするなら8.は陰といったところでしょうか?
“Off The Record”は僕の別の面を表しているよ。とにかく気分が良かった」
アルバム「Off the Record」ライナーノーツより抜粋
OnとOffどちらも晒け出したロニー・ジョーダンの本アルバムは、解放感に溢れています。
At Last
「At Last」 (2003年)
- At Last
- Nite And Day
- Heaven 5:45
- You Might Need Somebody
- Word Of Mouth
- Tease
- Rondezvous
- Island Paradise
- (In) The Limelight
- St. Tropez (Club Mix)
全世界でミリオンセラーとなった「So What」からおよそ10年。
ブルーノート・レーベルからN-Coded Musicへと移籍、2003年にリリースされた「At Last」。
ヒップホップ色を強めながらもどこか吹っ切れた感があった前作「Off The Record」に比べ、今回は正反対の伝統的ジャズへ舵を向けたアルバムです。
「At Last」というタイトル通り、
「自分がやりたかったのはこんなコンテンポラリー・ジャズだった」
というようにシンプルなサウンドになっています。
George Benson(ジョージ・ベンソン)の初期のグルーヴ・ジャズに近い雰囲気と評されつつも、かつて彼が模範とし、リスペクトしていたウェス・モンゴメリー、グラント・グリーンを彷彿させる演奏でもあります。
またアコースティック・ギターによる7.「Rondezvous」や8.「Island Paradise」なども新鮮な響きで、ロニー・ジョーダンの柔軟な音楽性を感じ取ることができます。
これこそが彼本来の“音”であり、ロニー・ジョーダンのソウル・ジャズ・サウンドといえるアルバムでしょう。
「After 8」 (2004年)
- After 8
- 7th Heaven
- Goin’ Uptown
- Caught Up
- Say No More
- Search To Find
- Steppin’ Out
- I Remember You
- Lighthouse
- Bahia Magic
前作「At Last」に続いて、ジャズへのアプローチをさらに強めたアルバム「After 8」。
ヒップホップ系のアシッドジャズとコンテンポラリー・ジャズの間を往来するようなアルバム制作だったロニー・ジョーダンでしたが、今回、プロデュースからアレンジまで全てをロニー本人が担当しており、本格的なジャズ・サウンドへの方向転換となるアルバムです。
生楽器と打ち込みのプログラミングの音のバランスが絶妙で、そのリズムの上をロニーのスタイリッシュなギターが折り重なっていきます。
ラストの10.「Bahia Magic」はサンバ調で、ロニーの遊び心、余裕とも思えるリラックスした演奏を聴くことができます。
Blues Grinder
2009年、Private’n Public Musicレーベルからリリースされたアルバムが「The Rough and the Smooth」。
ロニー・ジョーダンにとって長年の夢であった、憧れのジャズ・ギター・ヒーロー達への個人的なトリビュート・アルバムと位置付けられる作品です。
The Rough and the Smooth (2009年)
- Stop!
- Rough And Ready
- In Full Swing
- Blues Grinder
- Medium Well
- Remember When
- The Rough & The Smooth
- Vanston Place
ロニー・ジョーダンがリスペクトしているミュージシャンとして列挙しているのは、前述のようにウェス・モンゴメリー、グラント・グリーンの他、Kenny Burrell(ケニー・バレル)、ジョージ・ベンソン、そしてThornel Schwartz (ソーネル・シュワルツ)、Jimmy Ponder(ジミー・ポンダー)、Melvin Sparks(メルヴィン・スパークス)のようなあまり知られていない巨匠達。
さらにJimmy Smith(ジミー・スミス)、Larry Young(ラリー・ヤング)などのジャズ・オルガン奏者などギタリスト以外のミュージシャンも多く、ドラマー、パーカッショニスト、ホルン奏者など多岐に渡ります。
現在の自らのギタープレイも、こういった他のミュージシャン達によるサポートがあってこそ成立するというロニー・ジョーダンの真摯な思いが凝縮されたジャズ・アルバムです。
「これらの曲をレコーディングするにあたり、私が最初にハマったファンキーなヴァイブ/ヒップ サウンドを再現したいと強く思いました。過去と現在のレジェンド、そしてグルーヴの多くの縁の下の力持ちたちに、私なりの方法で敬意を表したいと思いました。」
smoothjazzdailyより引用
そして今回、かつてリリースした自身のナンバーのリメイクが数曲収録されています。
2ndアルバム「Quiet Revolution」から「In Full Swing」と「Vanston Place」の2曲が、そしてデビュー・アルバム「The Antidote」から「Blues Grinder」が再録音されています。
smoothjazzdailyより引用
そのパートナーとして選ばれたのがMel Davis(メル デイビス)。そのテイクがこちら。
1stアルバム「The Antidote」の「Blues Grinder」から17年の時を経た新たな「Blues Grinder」。
ロニー・ジョーダンの円熟味を帯びた音と、ジャズ・ミュージシャン達との掛け合いは圧巻です。
ブルースを受け継ぐ者
ヒップホップと融合した、後期アシッドジャズのパイオニアとして知られるロニー・ジョーダン。
その音楽の多様性が故に、アルバムによって作品の振り幅が大きく変わるというギャップもありました。
しかし、一貫してその根底にあったのは純粋な「ジャズ」への敬意でした。
リラックスしながらも、生き生きと充実した表情を見せるロニー・ジョーダンの「Blues Grinder」。
残念ながら、彼によるブルース・ジャズの継承は途切れてしまいましたが、そのグルーヴは今も続いています。