Shall we Dance?
1980年に活動を開始したニュー・オーダー。イギリス、マンチェスター出身。
前身のバンドJoy Division(ジョイ・ディヴィジョン)時代を含めると、40年以上のキャリアになります。その長いキャリアの中で、幾度かの活動停止状態や、メンバーチェンジという危機がありましたが、現在も活動を継続、その他に類を見ない孤高のサウンドは多くの支持を集めています。
バブル時代をご経験の方は彼等の音楽を耳にしているかも知れません。
当時、空前の好景気に煽られ、日本中に“ディスコ”なるものが濫立、社会現象とまでなりました。そしてその“ディスコ”でニュー・オーダーの楽曲が流れたりしました。
現在でもニュー・オーダーと言えばテクノ、ハウス、エレクトロニカといったジャンルに分類されたりしています。
そのような経緯もあってニュー・オーダー=ダンスミュージックとして捉えられがちですが、その経歴やサウンドの変化、音楽シーンに与えた影響など、一括りでは収まらない深いものが有ります。
ここでは2000年から近年のニュー・オーダーの活動を基に、その独自の存在感の所以を紐解いていきたいと思います。
夢見る景色は同じでも
1990年代の半ば頃からニュー・オーダーはアルバムの制作過程においてメンバー間の不和が顕著に。それも要因の一つとなり、やがて活動休止状態になり、各々のソロ活動に専念するようになりました。その後2000年代に入り、活動を再開。2001年アルバム『Get Ready』をリリース。
Get Ready
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- Crystal
- 60 Miles an Hour
- Turn My Way
- Vicious Streak
- Primitive Notion
- Slow Jam
- Rock the Shack
- Someone Like You
- Close Range
- Run Wild
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従来のサウンドとは異なり、ギターサウンドを前面に押し出したロック色の強いアルバムとなりました。
80年代のブリティッシュロックを彷彿とさせる音作りで、ジョイ・ディヴィジョン時代を回想してしまいます。
翌年、ベストアルバムが発売され、
その時点で「2003年に新アルバムリリース」と告知するも、その後その新アルバムはリリースされることも無く、不安定な活動状態が続きました。
2年遅れでアルバムは公約通りリリースされましたが、再びメンバー間の不和が再燃し、バンド存続か解散かという宙に浮いた状態に陥ってしまいます。
そうです。またかです。こうやって改めてニュー・オーダーの経緯を綴ってみると、“協調性”に関するトラブルが多く、不利益を被る要因になりました。
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そして、こちらが2005年にリリースされたアルバム『Waiting for the Sirens Call』。
前作『Get Ready』同様の作りで、これもロック色の強いアルバムです。
しかし、引きずっていたバンドの不和は限界に達してしまい、ベーシスト、ピーター・フックと他のメンバーの確執は、互いに明言されるまでに表面化してしまいます。
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2007年に事実上、解散状態に陥ったニュー・オーダー。
これまでの事例もあり、今回ばかりはそのまま消滅かと危惧されましたが、2011年に再結成を発表し、2012年にその活動を再開しました。
しかし、このような“不安定な”活動スタンスの為に注目度、関心度が著しく低下したのも事実で、音楽シーンから遠ざかっていく感も否めませんでした。
しかも、ジョイ・ディヴィジョン時代からのオリジナルメンバーのピーター・フックが脱退。そんなこともあり、新しくリリースされるアルバムは、さほど期待を寄せる程のものではないような前評判でした。
2013年にリリースされた、再結成第一弾のアルバムは、以前発表したアルバム『Waiting for the Sirens Call』の録音の際のセッションの音源で、未発表曲で作られました。タイトルも『Lost Sirens』。まさに“失われた”音の復活でした。
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Lost Sirens
- I’ll Stay with You
- Sugarcane
- Recoil
- Califomian Grass
- Hellbent
- Shake it Up
- I’ve Got a Feeling
- I Told You So
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従来のコアなファンには、未発表曲のコンピレーションアルバムという事では支持を受けましたが、裏では、脱退したピーター・フックの画策が取り沙汰されたりと曰く付きの再スタートとなりました。
Brand New World
そんな、期待感よりも一抹の不安が勝ってしまい、ある意味、疑問が残る結果を招いてしまったニュー・オーダー。
しかし、2015年にリリースされた、全新曲で構成されたアルバム『Music Complete』は、この評判を覆す見事な作品でした。
Music Complete
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- Restless
- Singularity
- Plastic
- Tutti Frutti
- People On The High Line
- Stray Dog
- Academic
- Nothing But A Fool
- Unlearn This Hatred
- The Game
- Superheated
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2000年代に入りニュー・オーダーのサウンドは自らの原点回帰のような、ロックサウンドが主となっていましたが、ここではダンスミュージックとし周知された頃のエレクトロサウンドも取り上げられ、その両者が絶妙なバランスで融合されています。
彼等らしい美しいメロディー、ポップさも健在で、会心の1枚です。
ついに、ロックやハウスという棲み分けできない、唯一無二の“ニュー・オーダー・サウンド”が確立されたアルバムです。
不安定な活動状態や模索するサウンド。
ファンならずとも今後の展望に多少の危惧感が付きまとっていたニュー・オーダー。
しかし、遂にそれらの不安要素を吹っ切り、新たな世界を確立した『Music Complete』。
ここからが真のニュー・オーダーが始まる予感がします。