Joy DivisionからNew Orderへ
パンク・ムーヴメント全盛期の1976年にイギリス・マンチェスターで結成されたJoy Division。
ポスト・パンクと称され次世代のUKミュージックシーンの担い手とされました。
1980年、ヴォーカルのイアン・カーティスの突然の死により、解散を余儀なくされました。
しかし、残された3人のメンバーは、音楽活動を継続することを決意。
以前に交わした「メンバーが一人でも欠けたらジョイ・ディヴィジョンの名前でバンド活動は行わない」という約束に基づき、新バンドは「ニュー・オーダー」と命名、活動を再開しました。
メンバーは亡くなったイアンカーティスを除く、
Bernard Summer (バーナード・サムナー)G.Key 、
Peter Hook(ピーター・フック) Ba. 、
Stephen Morris(スティーブン・モリス)Dr.
ヴォーカルはバーナード・サムナーが務めることになりました。
Dreams Never End
MOVEMENT (1981)
- Dreams Never End
- Truth
- Senses
- Chosen Time
- ICB
- The Him
- Doubts Even Here
- Denial
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1981年にリリースされたアルバム「MOVEMENT」。
それまでのJoy Divisionのサウンドを引き継いだかのような音楽性で、陰影のあるトーンの楽曲が続きます。
以前よりもシンセサイザーやシーケンサーが導入され、僅かですが、新たな境地を垣間見せてくれます。
暗中模索のスタートだったにもかかわらず、前向きな力強さを感じる1枚だと思います。
現在でも賛否両論のこの“デビューアルバム”。
しかし、イアン・カーティスの死を真摯に受け止め、そのサウンドを継続して行く選択した彼等の決意は、紛れもなく評価に値するものです。
1.「Dreams Never End」名曲です。
Power, Corruption & Lies 権力の美学 (1983)
- Age of Consent
- We All Stand
- The Village
- 5 8 6
- Your Silent Face
- Ultraviolence
- Ecstasy
- Leave Me Alone
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それまでのダークなポスト・パンクのイメージを一新し、New Orderとしての独自のサウンドとその存在感を知らしめたセカンド・アルバムです。
82年にスティーヴン・モリスの公私にわたるパートナー、ジリアン・ギルバートがキーボード奏者として加入、このことがサウンドに変化をもたらします。
ドラムマシーンやシンセサイザーなどを全面的に導入するなど、グループとしてエレクトロポップへと転換していくことになります。
そして同年、所属レーベルのファクトリー・レコードの社長であるトニー・ウィルソンととともに、地元マンチェスターにディスコをオープンさせました。
翌年、83年の3月このアルバム発売に先行してリリースされたシングル「Blue Monday」
この曲はインディーズチャートだけでなく、メジャーでも30週間以上ランクインし、彼らの名前が全世界に知られる大ヒットとなりました。
そして前述の自らプロデュースしたディスコを中心としたクラブでの人気は高く、この事が後の彼等の方向性を左右していくことになります。
そしてその2ヶ月後にリリースされたのが「Power, Corruption & Lies 権力の美学」です。
シングル「Blue Monday」の効果もあり、当然のことながら大ヒット。
このアルバムを“ニュー・オーダー最高傑作”と言わしめる程の高評価を得ました。
ちなみに印象的なジャケットはフランスの画家、アンリ・ファンタン=ラトゥールの“絵”です。
呪縛からの解放 そして成功
Low-Life (1985)
- Love Vigilantes
- The Perfect Kiss
- This Time of Night
- Sunrise
- Elegia
- Sooner Than You Think
- Sub-culture
- Face Up
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ニュー・オーダーとしての3枚目のアルバム。
前作でその方向性を示した彼等の音楽が更に飛躍を遂げた快作です。
セカンドまではジョイ・ディヴィジョン、そしてイアン・カーティスの残像が少なからず見え隠れしていましたが、このアルバムでは完全に払拭されて、新たにダンスミュージックとして確固たる地位を確立しました。
このアルバムから初めてシングルカットされた「The Perfect Kiss 」
ちなみに1993年から5年余り、活動を停止することになったニュー・オーダー。
そして、1998年にの活動再開以降からは、全くライブで演奏されずに“封印されていた”この「The Perfect Kiss 」が、2006年に入ってから再びセットリスト上がり、披露されることになりました。
ポップなシンセ・サウンド、そしてカラフルな照明の中でダンスに興じるオーディエンスとは裏腹に、
内省的で抽象的な歌詞は意味深げで、その明と暗の対比が名作たる所以ではないでしょうか。
Brotherhood (1986)
- Paradise
- Weirdo
- As It Is When It Was
- Broken Promise
- Way of Life
- Bizarre Love Triangle
- All Day Long
- Angel Dust
- Every Little Counts
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前作よりさらに開放感に溢れたアルバムです。
全英アルバムチャート9位を獲得、ニュー・オーダーの名声をさらに広めた1枚となりました。
1~5が“バンド・サウンド”後半の6~9が“エレクトロポップ”という設定で構成されています。
前半のバーナード・サムナーのギターがラフでノイジーなのに対して、後半のピーター・フックのベースはメロディアスでそれぞれのスタンスを感じ取れますが、実はこれは全くの逆で、バーナード・サムナーはエレクトロポップ寄りで、ピーター・フックはバンド・サウンドよりなんだそうです。
全く相反する二人の嗜好と個性が融合した奇跡のアルバムかも知れません。
(詳しくはNEW ORDERⅡを)
このアルバムからシングルカットされた「Bizarre Love Triangle」は全英シングルチャート56位、全米ダンスチャートでは4位を記録しました。
この曲のMVは、現代芸術家の
ロバート・ロンゴが制作しており、
作品中に青空を背景にスーツ姿の男女それぞれが宙を舞う映像が挿入されています。
不自然な感じがしますが、彼の代表作でネクタイやスカートが風に舞う、
モノクロの人物像の作品
「メン・イン・ザ・シティーズ」
の連作をみると、腑に落ちるものがあります。
アルバムジャケットはニュー・オーダーが所属するファクトリー・レコードの専属デザイナーだった
Peter Savill(ピーター・サヴィル)。
今回のジャケットデザインはチタンと亜鉛の合金のシートの写真を使用しています。
初期リリースの限定盤は、金属製のスリーブに入っていました。
当時、彼の手掛けた革新的なアルバムジャケットは、パンク・ロックとモダニスト デザインの融合と評されました。いまや英国で最も著名なグラフィックデザイナーの一人でもある ピーター・サヴィル。近年では2019年に、ユニクロとのコラボレーションコレクションを発表したりしています。
そして浮遊する“音”へ
ニュー・オーダーとして活動を再開した彼等。
当初はジョイ・ディヴィジョンの影を引き継いだかのような音楽性でしたが、当時ポスト・パンクとして様々なジャンルの音楽が濫立していた背景を上手く取り込むことにその活路を見いだしました。
その柔軟な多様性が、ニューウェーブ、テクノ、エレクトロポップ、そしてディスコ、ハウスといった多数のジャンルで評される唯一無二のバンドと評され、その分野の礎を築きました。